1 はじめに
さあ今日は昨日の続き、裁判離婚について話そうか。
裁判離婚は、原則、いきなりは無理なのよね。まず調停を行う必要がある、だったかな。
そうそう、よく覚えていたね。
えっへん。
調停をしたけど不成立だった、審判離婚もだめだった、そこで登場するのが裁判離婚さ。
ドラマでのイメージも強いと思うね。
うんうん。
さあ、始めようか。
はい。
2 裁判管轄
いきなりだけど、まずは管轄の話ね。
管轄っていうのは、裁判をどこで行うかっていう話よね。
そうだね。裁判離婚の管轄は、「当事者が普通裁判籍を有する地」(人事訴訟法4条1項)とされている。普通裁判籍は、基本的に住所によって決まるから、つまりは、原告または被告の住所地を管轄している家庭裁判所に訴えを起こせばいいということになるね。
あ、原告の住んでるところの家庭裁判所でもいいのかあ。
そうそう。調停と違うところだね。
3 裁判離婚の中身
裁判離婚というのは、どういうものなの?
裁判離婚というのは、要するに訴訟だから、最終的には判決が出る。
その判決に向けて、当事者は主張立証をしていく。
主張立証って、一体何を主張立証するの。「私たちは、こんなに仲が悪いんです!」とか?
まあ、それも間違ってはいないよ。
正確には、下の離婚原因を主張立証することになる。この内、1つでも認められれば、判決によって離婚が認められることになる。
1号 不貞行為
2号 悪意の遺棄
3号 3年以上の生死不明
4号 回復の見込みのない強度の精神病
5号 その他婚姻を継続しがたい重大な事由
「悪意の遺棄」ってなにかしら?悪い気持ちで、放置するとか?
悪意の遺棄というのは確かに聞き慣れない言葉だね。
正確にいうと、正当な理由無く民法752条の同居協力扶助義務を履行しないことをいうのだけど、まあざっくりいうと、自分勝手に夫婦としての義務を果たさないという感じだね。まあ、この辺りはまた別のところで勉強しよう。
なるほど。自分勝手な夫は、ぷにすとんが許さない!
そうだね。
その他、離婚裁判には何か特徴がある?
うむ。重要な特徴があるよ。
4 離婚裁判の特徴
離婚裁判を起こす場合には、親権者の指定は必ず同時になされなければならないんだ(民法819条2項)。3
親権者が定まらないまま離婚しちゃったら、子供がかわいそうだものね。離婚する親の最低限の責任というものね。
そうだね。
このほか、申し立てがあれば、子の監護者の指定その他子の監護に関する処分、財産分与に関する処分または年金分割についての裁判もする(人事訴訟法32条1項)。
財産分与も一緒にできるのかあ。
そうそう。それとね、よく浮気したことの慰謝料とかいうでしょ。それも一緒に請求できるんだ。
えっと、そんがいばいしょう、だっけ?
そうそう。離婚原因によって生じた損害賠償請求権なら、離婚訴訟の中で請求できるのさ(人事訴訟法17条1項)。
離婚原因によって生じた??
うん。例えば、夫が浮気をした、その浮気が原因で離婚することになった、その浮気で損害賠償請求権が生じた、そうすると、離婚原因である浮気から損害賠償請求権が生じたことになるよね。
この損害賠償請求は、離婚訴訟の中でできる、そういうこと。
なるほどお。
でもね、夫の浮気によって夫婦関係が破綻した後に、夫に暴力を振るわれた場合はどうかな?この場合は、夫の浮気によって夫婦関係が破綻したのだから、その浮気によって生じた損害賠償請求権を離婚訴訟の中で行使することは可能、これは前と一緒だよね。
うん。暴力の方は違うの?
うむ。夫の暴力によっても、確かに損害賠償請求権は生じる。
しかし、この暴力は、夫婦関係の破綻の原因になったわけではない(あくまで、夫婦関係破綻後の暴力)んだよね。そうすると、この損害賠償請求権は、離婚原因によって生じたといえないから、離婚訴訟の中で行使することはできないんだ。
ええええ。じゃあ暴力による損害賠償は請求できないの?
いやいや、誤解しちゃだめだよ。
あくまで、離婚訴訟の中で請求できないだけ。
別の訴訟を提起することで請求はできるからね。
なーんだ。よかった。
最後に、控訴の話。
控訴って何。
控訴っていうのは、ざっくりいえば、第1審の判決に不満がある場合、上の裁判所に訴えを起こすことだね。
なるほどぉ。
離婚訴訟でも、当然控訴は可能さ。
離婚認容の判決に不服はないんだけど、前に言ったような、親権者指定、監護に関する処分、財産分与などについて不服がある場合、不服部分についてのみ控訴することもできるんだ。
離婚については確定する?
いや、そうはならない。
親権者指定等の附帯部分と離婚訴訟はいわば一心同体、切っても切り離せない関係にある。
だから、附帯部分だけ控訴しても、離婚訴訟についても、上の裁判所で再審理が行われるんだよ。
あ、そういえば、和解・認諾離婚っていうのは?
ああ、それはね、この離婚訴訟の中で和解したり、訴えられた側が離婚することを認めたり(認諾という)することをいうんだよ(人事訴訟法37条1項)。
なるほどなあ。今日は少し難しかったな。
そうだね、ここいらで休憩をいれよう。
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